シリーズ「Taking back control in a complex eCommerce world」の前回の記事では、AIが購買の判断が起きる場所と方法をどう塗り替えつつあるか、そしてストアオーナーやEC担当者が流入を増やすことだけでなく、意思決定の瞬間の改善にも目を向けるべき理由についてお話ししました。
しかし、次の問題があります。あらゆる改善は、データを前提にしています。そのデータが汚れていたら、どうでしょうか。
ECに長く携わっていれば、こんな経験があるかもしれません。
- エンゲージメントのデータをもとに商品ページを作り直したあとで、そのセッションの半分は本当に実在の買い物客だったのだろうか、と疑問がわいた。
- ROASが良く見えたのでキャンペーンを拡大したら、その流入元がボットのセッションであふれていたことに気づいた。
- 何百件ものかご落ちにリカバリーメールを送ったら、半分が届かなかった。メールアドレスが偽物だった。
- A/Bテストを回して勝ちパターンを決めた。しかし、両方の案を何体のボットが見ていたのかは分からない。
レポートがどこか「おかしい」。けれど、なぜかを証明できない。誰かが「ボットのせいですね」と言う。強力な技術チームを抱える大企業でもないかぎり、その問題が完全に解決されることは、おそらくありません。
誰もその問題の担当者になりません。責任はやはり自分に残ります。そして、判断はしなければなりません。
では、完全には信用できないデータで、どう前に進めばよいのでしょうか。
この記事は、技術者ではない運営担当、マーケター、営業チーム、EC責任者に向けたものです。Cloudflareのボット対策の設定方法や、フィルターの作り方を手順で示すつもりはありません。
ボットが存在することは、すでにご存じでしょう。データが100%きれいなことなどめったにないことも、ご存じのはずです。それを改めて説明することもしません。
その代わりに、別の問題を解きます。境界があいまいなときに、どう判断するか。どのデータなら動くに足るのか。どのデータには懐疑的であるべきか。そして、不完全な数字に足を止められないための実践的な枠組みをどう作るか、です。
読み終える頃には、ボットのアクセスがECの判断をどう歪めるのかがはっきり見え、それでも自信をもって手を打ち続ける方法が身についているはずです。
この記事では、ECの専門家Nahar Geva氏にも見解を伺いました。Nahar氏は2015年からECの起業家として活動し、ZIK Analyticsの創業者兼CEOを務めています。
業界での実践的な経験が、やがてECでもっとも知られる商品リサーチ基盤のひとつを生み出すことにつながりました。
現在、ZIK Analyticsは世界30万人以上の販売者を支えています。プラットフォームの枠を超え、Nahar氏は講演者・メンターとしても信頼を集めており、経歴や経験の有無にかかわらず、普通の人がECを通じて経済的な自立を実現することに強い情熱を注いでいます。
1. かんたんな「ボット入門」と市場の変化
実践的な枠組みに入る前に、土台を手短に押さえておきましょう。どんな種類のボットがいて、どれがデータを狂わせるのか、です。
ボットは目的別に3つに分けられます。
| 分類 | 例 | 何をするか |
|---|---|---|
| 有益 | 検索エンジンのクローラー、アクセシビリティ検査、許可された外部連携 | ストアが見つけてもらえるようにし、正しく機能させます。歓迎すべき存在です。 |
| 望ましくない | 価格収集ツール、再入荷監視、素性不明のクローラー、無許可の負荷テスト | 直接の害はないものの、データを汚し、リソースを消費します。グレーゾーンです。 |
| 有害 | DDoS攻撃、決済不正のボット、アカウント乗っ取り、模倣品業者の収集ツール、偽の会員登録ボット | 事業に実害を与え、データを盗み、不正を働きます。 |
もっと噛み砕くと:
- ありがたい来客:Googleなど、人があなたを見つける手助けをしてくれる検索エンジン。歓迎すべき存在です。
- 不作法な隣人:価格や在庫を収集していく競合。お金を盗んでいるわけではありませんが、データを詰まらせ、リソースを浪費させます。
- 侵入者:アカウントを盗もうとしたり、盗んだカード情報を試したりする詐欺者。実際の金銭的な被害を生むのはこの層です。
💡豆知識: CAPTCHAはどうやって人間とボットを見分けているかご存じですか。
人間は雑です。ボットは正確です。CAPTCHAはまさにそこを利用しています。
私たちは迷い、上にスクロールし直し、「間違った押し方」をします。ボットは完璧です。毎回きっちり11.5秒ページに滞在します。まったく同じ挙動の訪問者がかたまって見えたら、それは似た好みの買い物客の集団ではなく、スクリプトです。
そして同時に、これが高度なボットほど捕まえにくい理由でもあります。彼らはランダム性を加えることを学び始めているからです。
では、AIのクローラーはどうでしょう。買い物客のように振る舞うのでしょうか。
結論から言えば、いいえ。
正規のAIクローラーはユーザーエージェントで自分を名乗り、コンテンツを取得し、robots.txtのルールに従います。買い物の行動を模倣することはありません。買い物客ではなく、従来の検索エンジンのクローラーのように振る舞います。
ですから、正規のAIクローラーがストアに偽の購買アクションを積み増す心配は不要です。
警戒すべきAI関連の脅威は別にあります。悪意ある者がAIを使って人間の振る舞いを模倣させる、AI支援型のボットです。これはセクション3で扱います。
手短にまとめると:
- 良いボット:検索エンジン、正規のAIクローラー、監視ツール。歓迎すべき存在です。
- 悪いボット:データ収集ツール、転売目的の自動購入、決済不正、アカウント乗っ取り、偽の会員登録、そしてチェックアウトや認証、データの受け口を悪用するボット。
すべてのボットを見分ける必要はありません。すべてを防ぐ必要もありません。それはIT部門の仕事です。
運営側としての出発点は、もっとシンプルです。ボットの挙動がどこで判断を歪めるのかを理解し、それにどう対処するかを決めることです。
Nahar Geva氏:
ボットのアクセスは昔からありますが、実際の成約という点では、正直それほど問題になりません。適切なデータに集中していれば、ボットのアクセスは関係なくなります。ボットは実際に何も買えないのですから。訪問者数や閲覧数は水増しできますが、結局のところ「カートに追加」「チェックアウト開始」「購入」といったイベントを発生させるのは実在の人だけです。ですから購入とROASを軸に最適化しているなら、すでにノイズを切り抜けており、ボットのアクセスはもう問題ではありません。
2. 影響を診断する:いつ/どこで/どの指標が
ボットのアクセスの影響を完全に切り離したい、という方もいるでしょう。ほとんどのEC事業について正直に言えば、それはできません。
ただ、それは受け身でいるという意味ではありません。データがきれいでも汚れていても判断できるようになる、ということです。
DataDomeの2024年グローバル・ボットセキュリティ報告によれば、悪質なボットから完全に守られているECサイトは約10%にすぎません。65%以上は、単純なボット攻撃にすら無防備です。オンラインストアを運営しているなら、ボットのアクセスはほぼ確実にすでにデータへ入り込んでいます。
ですから、もっとも賢いのは完璧にきれいなデータを追い求めることではありません。影響を診断することです。ボットのアクセスはいつ急増し、どこに現れ、どの指標を歪めるのか、を見極めるのです。
2.1 いつ急増するのか
決まった「攻撃シーズン」はありません。ただ、ブラックフライデーやホリデーセールなど、大きな商戦や高負荷の時期にボットのアクセスは増える傾向があります。
理由は単純です。この時期は誰もが活発になります。事業者は市場調査や競合監視、トレンド追跡のためにツールを走らせます。買い物客も押し寄せます。そして攻撃者は、その物量に紛れ込むのです。
とはいえ、いまや攻撃は季節ものではなく、通年で起きています。商戦期は単に、アクセスが増えてボットが身を隠しやすくなる、もっとも神経を使うべき時期だということです。
この時期の数字にはとくに注意してください。成長に見える数字が、単なるノイズかもしれません。
2.2 どこの、どのデータが影響を受けるのか
すべての指標が同じように脆いわけではありません。歪みやすい指標を、カスタマージャーニーに沿って挙げます。
- 流入元別のセッション。 ボットのアクセスは「直接」や「なし」に集まりやすく、そのチャネルだけを不自然に膨らませます。
- 商品ページの表示とエンゲージメント。 偽の訪問が混じると、どの商品に本当に関心が集まっているのかが見えにくくなります。
- カート追加率。 買い物の動きを模倣するボットがこの数字を押し上げ、ファネルを実際より健全に見せてしまいます。
- チェックアウトの離脱率。 完了しないボット起点のチェックアウトによって、この数字は当てにならなくなります。
- メール取得・会員登録フォーム。 偽の送信がリストを汚し、費用のかかる自動配信を無駄に走らせます。
- キャンペーンの効果測定。 広告リンク経由でボットが来れば、ROASの計算は狂います。
大事なのは、このうちいくつかはきれいで、いくつかはノイズまみれだということ。すべてが同じように歪むわけではありません。
Google Analyticsの購入ジャーニー画面の例
Nahar Geva氏:
閲覧数、訪問者数、クリック数が膨らんでいるのに成約率が低い——これはボットのアクセスの兆候です。もちろん、ボットのアクセスが大きくなく、ボットか人間かの判別がずっと難しいケースもあります。しかし結局のところ大事なのは購買の動きです。ですからキャンペーンがうまくいっていてROASがプラスなら、他の「アクセス」データは完全に無視して構いません。
では、ボットが特定の指標に実際に影響しているかどうかを、どう見分ければよいのでしょうか。 私ならこう考えます。
強力なIT部門があるなら、データを絞り込んできれいな数字を出してもらえます。それが理想です。
そうでないなら、自社の平常値と比べましょう。見るべきポイントはこちらです。
- セッションが急増した? 分解しましょう。直帰率が通常の範囲に収まっているか、それともあり得ないほど低い(または高い)値に振れていないかを確認します。
- 商品ページの表示が急増した? 滞在時間を見ましょう。人間は雑、ボットは正確です。セッションごとの滞在時間がほぼ同一で、同じ長さ、同じパターンなら、それはボットである可能性が高いといえます。
- チェックアウトの離脱が急増した? セッションの録画を見ましょう。実在の買い物客は、それぞれ違う段階で、違うタイミングで離れます。ボットは同じ段階で、同じタイミングで離れます。
やり方は毎回同じです。異常値を、自社にとっての「普通」と比べること。あなたの経験と自社への理解は、立派な診断ツールです。
もうひとつ覚えておきたいこと。いま下すべき判断が、歪んだ指標と関係ないのであれば、ひと息ついて大丈夫です。ノイズのある数字のすべてが、ただちに手を打つべきものではありません。
「全部無視しよう」と言っているのではありません。「慎重に読み解こう」と言っているだけです。
⚠️ 知っておきたいこと:分析ツールの死角
分析画面が見ているのは、JavaScriptを読み込みCookieを受け入れた訪問者だけです。玄関から入って、来客名簿に記帳したお客様だと考えてください。
サーバーはすべてを見ています。あらゆるリクエスト、あらゆるノックを。計測タグをまるごと素通りするボットも含めてです。
だからこそ、ホスティングのログではアクセスが荒れているのに、分析画面はまったく静かに見えることがあるのです。この2つに差があるなら、それは可視性の問題であり、何か自動化されたものが気づかれずにストアを叩いている兆候である可能性が高いといえます。
ここまでが土台です。それでは、実践的な枠組みに入りましょう。
3. 指標のための「データ信頼度」の階層
診断は済みました。ボットのアクセスがいつ増えるかも、どの指標が歪みやすいかも分かりました。分析ツールの死角についても感覚が掴めたはずです。
さて、あなたは分析画面の前に座っています。問いは変わりません。この数字のうち、どれを実際に使えるのか。
多くの運営担当がここで詰まります。データがないからではなく、信頼できる手がかりとそうでないものを仕分ける方法がないからです。
世の中の情報も、あまり助けになりません。ボットのアクセスをひとまとめにして、人間以外の訪問をすべて同じ脅威として扱ってしまうからです。それは誤解を招きます。
ボットが違えば、生まれる歪みも違います。歪みが違えば、影響を受けるデータの場所も違います。そこが見えると、問いが変わります。
「自分のデータは間違っているのか」ではなく、もっと役に立つ問い——「このデータは、この判断に使うには十分か」——を立てられるようになるのです。
このセクションで組み立てるのは、まさにそれです。
3.1 ボットが違えば、歪みも違う
先ほど、目的別に有益・望ましくない・有害という3つの分類をご紹介しました。
それぞれがデータをどう違った形で歪めるのかを見ていきましょう。
| 分類 | 運用主体 | 目的 | アクセス規模 |
|---|---|---|---|
| AIプラットフォームのクローラー | OpenAI、Google、Anthropic | インデックス作成、モデルの学習 | 中程度 |
| SEO・データ収集ボット | エージェンシー、ベンダー、競合 | 情報収集、価格監視、順位追跡 | 多い |
| 攻撃ボット | 攻撃者 | 不正、悪用、アカウント乗っ取り | 非常に多い |
| AI支援型ボット | 誰でも | 情報収集から不正まで何でも | 爆発的に増加中 |
もう少し具体的に見ていきます。
AIプラットフォームのクローラーは、インデックス作成とモデルの学習を行っています。通常はユーザーエージェントで自分を名乗り、robots.txtのルールに従い、買い物の行動を模倣しません。ページの内容を取得して次へ進むだけです。生じるデータの歪みは、記事や商品ページの表示数が膨らむ程度にとどまります。表示数だけが急増し、エンゲージメントやカート追加に変化がないなら、おそらくこれです。
SEO・データ収集ボットは、価格、在庫数、キーワード順位、商品情報を集めるためにサイトを走査します。商品ページを繰り返し巡回するのはこの層で、エンゲージメント指標が膨らむ大きな原因になります。どの商品に本当にお客様の関心が集まっているのか、どれが単に競合に監視されているだけなのか、その区別を難しくします。
攻撃ボットは、システムを悪用するために来ています。決済不正、アカウント乗っ取り、偽の会員登録、チェックアウトの悪用など。チェックアウトと取引のデータをもっとも大きく歪めるのがこの層です。かご落ち率を押し上げ、決済失敗のノイズを生み、偽アドレスでメールリストを汚します。
AI支援型ボットは、もっとも新しく、もっとも急速に増えている分類です。誰でも、どんな目的でも運用でき、AIツールを高性能にしているのと同じ大規模言語モデルで動いています。特徴は、より人間らしく振る舞うことを学んでいる点です。タイミングにランダム性を加え、IPアドレスを切り替え、実際の閲覧パターンを模倣します。増加は爆発的で、従来のボット検知が頼ってきた予測可能なパターンに従わないため、もっとも見つけにくい存在です。
実践的な要点:歪み方から、発生源が分かる
- 表示数だけ急増し、成約に変化なし? おそらく有益なクローラーか、望ましくないSEOボットです。歪んでいるのはアクセス量と表示数の指標です。
- カート追加のノイズ、チェックアウト離脱の急増、決済失敗? AIプラットフォームではありません。取引ファネルを狙う有害なボットの仕業です。
- 人間らしいのに、タイミングが不自然に揃っている? AI支援型の攻撃者です。歪みが実際の顧客データに溶け込むため、もっとも切り分けが難しくなります。
ボットが違えば、歪みも違う。そして次に見るように、そのデータに置ける信頼の度合いも違ってきます。
⏰ここでひと息、AIボットに関する興味深い最新情報を:
- AIボットがウェブのアクセスの主要な発生源になりつつあります(Toiibit「State of Bots Report」2025年第3・第4四半期)
- 自動化されたアクセスが人間のアクセスを上回りました。主な要因はAIとLLM搭載のボットで、悪質なボットは全アクセスの37%を占めています(Impervaの報告)
- DataDomeの報告(2025年第4四半期)は、悪質なボットや望ましくないAIアクセスへの備えがもっとも薄い業種として、通信、テクノロジー/ソフトウェア、ゲームを挙げています。
3.2 データ信頼度モデル
このモデルは、ECの指標を1つの問いにもとづいて3つの段階に仕分けます。そのデータは、ボットにとってどれくらい偽装しにくいか。
各段階が、そのデータで支えられる判断の種類に対応します。
信頼度:高
完了した注文。売上。返金率。決済データ。
ボットにとってもっとも操作しにくい指標です。実際にお金が動く必要があるからです。ボットは表示数を膨らませたり、登録フォームを荒らしたりはできますが、有効な決済手段による正当な購入を生み出すことはできません。
これがあなたの土台です。売上の成果、チャネルのROI、在庫の補充、予算配分を判断するときは、この数字に寄りかかりましょう。
例:ある商品が伸びているように見える。表示数だけでその判断をしてはいけません。完了した注文を見ましょう。注文が伸びているなら、表示数がどれだけ膨らんでいようと、その傾向は本物です。
信頼度:中
配送情報のページに到達する、メールを入力する、決済手段を選ぶといったチェックアウト途中の行動。ログイン後の顧客の行動。再購入、レビュー投稿、サポートへの問い合わせといった購入後の行動。
これらは何らかの認証や関与を伴うため、単純なボットには生成しにくくなります。ただ、いまや高度なボットならこれらも歪められると私たちは考えています。とくにチェックアウトの各段階とログインの動きです。
信頼度・中の手がかりは、ファネルの改善や顧客のセグメント分けに使いましょう。ただし、重要な判断のときは疑ってかかることです。
例:新しいチェックアウトの流れをテストしている。信頼度・中のデータは判断の助けになりますが、恒久的な変更に踏み切る前に、完了した注文と売上で裏を取りましょう。
💡 専門家のヒント:チェックアウトの検証でファネルのノイズを減らす
複数ページのチェックアウトを使っているなら、検証ルールを追加するのは、偽物や不完全なチェックアウト行動がファネルの奥まで進むのを減らす現実的な方法です。
Shopifyのチェックアウトカスタマイズアプリを使えば、セッションが次に進む前に、カートの内容、注文金額、連絡先や配送先の情報について要件を設定できます。ボットの活動を完全になくせるわけではありませんが、信頼度・中の手がかりを目に見えてきれいにする程度にはハードルを上げられます。
さらにチェックアウトの検証は、条件を満たさない注文をふるい落とし、情報の不足や誤りでお客様に確認を取る手間を減らすことにも役立ちます。
Qikify Checkout Customizerアプリによるチェックアウト検証の例
信頼度:低
セッション。匿名の表示数。カート追加のイベント。メール登録。滞在時間やスクロールの深さといったエンゲージメント指標。
ボットにとってもっとも作りやすく、検証がもっとも難しいものです。
1体の収集ボットが数百のセッションを作れます。フォーム荒らしのボットは、一晩で数千の偽アドレスをリストに追加できます。競合の価格監視ツールひとつで、ある商品が表示数の上では爆発的な人気に見えてしまいます。
信頼度・低の手がかりは、方向性を掴むためだけに使いましょう。何かが起きていることは分かりますが、それが何で、なぜなのかを、大きな判断の根拠にできるほどの確からしさでは教えてくれません。
覚えておきたい3つのルール:
- 成約が伴っているかを確かめずに、アクセスの急増だけで広告費を増やさないこと。
- 実際の購買を確認せずに、表示数だけでトップページに商品を大きく載せないこと。
- 初回配信後の不達率と反応を確認せずに、メール登録数を額面どおりに信じないこと。
このモデルの早見表です。
| 信頼度 | 指標 | 使いどころ | 判断の例 |
|---|---|---|---|
| 高 | 完了した注文、売上、返金率、決済データ | 売上に関する判断、チャネルのROI、在庫補充、予算配分 | 「この商品を追加発注すべきか?」表示数ではなく、完了した注文を見る。 |
| 中 | チェックアウト途中の行動、ログイン後の行動、購入後の行動 | ファネルの改善、顧客のセグメント分け(ただし注意つき) | 「新しいチェックアウトの流れは良くなったか?」完了率を確認し、実際の売上で裏を取る。 |
| 低 | セッション、表示数、カート追加、メール登録、エンゲージメント指標 | 方向性を掴むためだけに。動く前に必ず他と突き合わせる。 | 「この商品は伸びているか?」表示数は「はい」と言うが、大きく扱う前に注文を確認する。 |
目的は、データに対して疑心暗鬼にさせることではありません。行動に移す前に、その数字にどれだけの重みを置くべきかを一貫した方法で判断できるようにすることです。
リードスコアリングのようなものだと考えてください。有望な見込み客に当たる前に、リードを評価して順位づけしますよね。判断の前に、データに対して同じ作業をするのです。
実際の場面ではこうなります。チームの誰かがこう言います。「今月アクセスが30%増えました。予算を増やして拡大しましょう」
ボットの調査を始める必要はありません。1つだけ問えばいいのです。アクセス数は、そのまま判断に使える指標か、それとも裏取りが必要な指標か。
裏取りが必要な指標です。ですから予算をいじる前に、売上か完了した注文と突き合わせましょう。そちらでも伸びているなら、動いて構いません。伸びていないなら、踏み切る前にもう少し掘り下げましょう。
4. Shopifyが裏側でやっていること(と、その穴)
この記事の主題は、不完全なデータでより良い判断を下すことであって、技術的な解決策をお渡しすることではありません。
とはいえ、使っているプラットフォームが裏側で何をしてくれているかを知っておくと役に立ちます。それによって数字の読み方が変わるからです。
Shopifyをお使いなら、最近の3つの変更を知っておく価値があります。
- 「人間かボットか」のセッション区分: 実在のお客様のセッションと自動化されたアクセスを分けられる、新しいレポートの絞り込み条件です。
- robots.txtの境界線: 人による確認なしに自律的なAIエージェントが決済を完了することを防ぐ、新しい既定ルールです。
- Shopify Flowによる自動化: 疑わしい注文を保留にしたり、通常と異なる動きに警告を出したりするカスタムルールです。
技術的な詳細を理解する必要はありません。大事なのは、これらが存在することと、それが自社のデータの評価にどう関わるかを知っておくことです。
ボット絞り込みのアップデート
運営担当にとってもっとも関係が深いのは、2025年10月7日に導入された「人間かボットか」のセッション区分です。Shopifyの分析画面のなかで、実在のお客様のセッションと自動化されたアクセスを直接分けられます。
これによって次のことができます。
- 成約しないボットのセッションを除いて、本当のコンバージョン率を確認する。
- 流入元を比べて、実在の買い物客を連れてくるチャネルと、ボットで膨らんでいるチャネルを見分ける。
- セッション、コンバージョン率、訪問者数など、セッション関連の標準指標すべてでこの絞り込みを使う。
Shopifyによる人間とボットの活動の定義
Shopifyは、これをヘッドレスやHydrogenのストアでも使えるようにする予定を発表しています。絞り込みの使い方はShopifyヘルプセンターのボット絞り込みの記事をご覧ください。
知っておくべき制約もあります。この絞り込みはセッション関連の指標にのみ適用され、対象は2025年10月7日以降のデータだけです。セッションの判定には24〜48時間かかります。つまりリアルタイムでは「汚れて」見え、2日後に「きれい」になります。重要なのは、この絞り込みはレポートを直してくれますが、いまこの瞬間にボットがMetaやGoogleのピクセルを発火させるのを止めてはくれない、という点です。広告のアルゴリズムは、Shopifyが印を付ける前にボットを「見て」しまっています。
有料広告を運用している人にとって最大の穴:
この絞り込みは、ボットがリアルタイムでマーケティング用のピクセルを発火させるのを防ぎません。MetaやGoogleの広告アルゴリズムは、受け取ったあらゆる信号——ボットが生んだものも含めて——から学習します。RedditやShopifyコミュニティでの議論を見るかぎり、多くのストアがボットのアクセスの問題に直面しており、とくに有料広告の実施中、アクセスが増えてボットが紛れ込みやすい時期に集中しています。
有料広告でこうした問題に当たったことがあるなら、キャンペーンのターゲティングと除外のルールを丁寧に作り込む時間を取ることをおすすめします。ボットを完全には防げませんが、絞り込みを厳しくして予算を守ることは十分に可能です。
データ信頼度モデルに照らすと、この絞り込みがもっとも役立つのは信頼度・低の手がかりの改善です。セッション、表示数、流入元のデータは、人間のみに絞ることで信頼できるようになります。信頼度・高の指標は変わりません。もともとボットには偽装しにくいものだからです。
より深い防御と分析のための外部ツール
Shopify標準のツールは意味のある前進です。ただ、すべてを解決してはくれません。Shopify Plusプランであっても絞り込みが十分に効いているかについては、コミュニティで少なからず不満の声が上がっています。
それが問題になるようなら、外部ツールが役に立ちます。大きく2種類あります。
防御アプリ: 悪質なアクセスがデータに届く前に遮断するためのものです。よく使われるのは、Dissable Right Click & NoSpy(スパイ、ボット、VPNなどからストアを保護)、Blockify(IP、国、VPNの遮断による幅広いストア保護)など。
高度な分析基盤: PostHogやMixpanelなど。Shopifyと連携し、セッションの録画、カスタムイベントの計測、ファネル分析、ユーザーのセグメント分けを提供します。ボットを遮断はしませんが、データを掘り下げ、怪しいパターンを見つけ、信頼度の異なる指標を突き合わせることができます。どちらも小規模ストア向けの無料枠があります。
PostHogでボットのイベントを絞り込む設定
いますぐこれらを導入する必要はありません。ただ、標準の絞り込みを使ってもデータが当てにならないと感じ始めたら、次の一手がこれです。
Shopifyのプランによる違い
BasicとStandardのプランでは、既製のレポートと「人間かボットか」のセッション絞り込みが使えます。データ信頼度モデルを実践する多くの運営担当にとって、これで要点は押さえられます。
Shopify Plusでは、さらにShopifyQL Notebooksが加わり、技術者やエージェンシーが高度なクエリを実行して複雑なボットのパターンを特定したり、独自のレポートを作ったりできます。
すべてのShopifyプランで、Shopifyはストアフロントの既定ルールを更新し、人による確認なしに自律的なAIエージェントが購入を完了することを防いでいます。これは取引とチェックアウトのデータ——信頼度モデルの最上位にある、そのまま判断に使える指標——を守ります。設定は不要で、プラットフォーム側で対応されています。
標準プランをお使いの多くのマーチャントにとっては、この標準の絞り込みとセクション3の信頼度モデルがあれば、かなりのところまで進めます。
Nahar Geva氏から、すべてのEC事業者への最後の助言:
EC事業者として、私たちは事業のさまざまな場面でデータにもとづく判断を下します。しかし、もっとも重大なデータ主導の判断は、最初の一歩——何を売るかを決める瞬間——にあると私は考えます。多くの新規販売者は、早く始めたいあまりに急ぎ、最初に思いついた商品が当たりだと思い込んでしまいます。しかし現実には、平均的な販売者は当たりを見つけるまでに10種類ほどの商品を試す必要があります。まさにそこで、ほとんどの人がつまずき、諦めてしまうのです。
人生のあらゆる機会と同じで、良い機会と悪い機会を見分ける力を身につけなければなりません。どういうことか。ひと言でいえば、基準をすべて満たす勝ち筋の商品を、何ひとつ妥協せずに探し続けることです。始める前に1週間探すことになったとしてもです。さらに、1つの商品だけに頼らないこと。最初の商品がうまくいく保証はないのですから、複数を試す準備が必要です。
そのためには、販売履歴、アクセスデータ、広告データを提供する分析ツールを使い、それらのデータと常識を組み合わせて選ぶことです。
販売の場がどこであれ——自分のShopifyストアでも、eBayでも、ドロップシッピングでも、ブランドオーナーでも、在庫を持つ販売者でも——何を売るかはデータで決めるべきです。それが、本当に売上を生む勝ち筋の商品に出会う確率を高め、EC事業者として成功する道です。現時点でEC事業者やドロップシッパー向けの商品リサーチツールとして先頭を走っているのがZIK Analyticsです。
5. 自信をもって締めくくる
ずいぶん広い範囲を扱いました。全体像を持ち帰っていただけるよう、手短におさらいしましょう。
ボットはすでにあなたのデータのなかにいます。そしてそれで構いません。すべてのボットが同じところを狂わせるわけではありません。どの種類がどの指標に効いているかが分かれば、対応できる状態にぐっと近づきます。
反応する前に診断すること。そして自社で使うデータ信頼度モデルを持つこと。迷ったら、予算・在庫・戦略に踏み切る前に他の指標と突き合わせましょう。
プラットフォームは助けてくれますが、穴もあります。必要なら外部ツールでその穴を埋められます。
そして、すべてを束ねる考え方の転換がこれです。
「自分のデータはきれいか」と問うのをやめる。
「このデータは、この判断に使うには十分に信頼できるか」と問い始める。
すべてのボットを遮断する必要はありません。完璧な分析も要りません。必要なのは、目の前の判断にとってどの数字が重要かを知り、それが行動に移すに足るほど信頼できるかを見極めることだけです。
運営担当にとっての「主導権」とは、そういうものです。
これは全7回のシリーズの第1回です:「Taking Back Control in a More Complex Ecommerce World」
次回は:すべてが集まる場所——チェックアウトへ向かいます。データが売上に変わり、お客様体験が試され、分析画面と現実の隔たりが目に見える形で現れる場所です。またそこでお会いしましょう。
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about the author
Lauren Nguyen
Qikify グロースマーケティングスペシャリスト
こんにちは!Qikifyのデータドリブンなマーケター、ローレンです。 私のミッションは、ShopifyをはじめとするECマーチャントの皆さまに、オンラインストアの成長と売上アップに直結する価値あるインサイトと効率的なソリューションをお届けすることです。 この業界に関わって以来、常に「皆さまの成功を後押しすること」を目標に、知識やノウハウを共有してきました。 マーケティングに夢中でないときは、美味しい朝のコーヒーで1日をスタートしています。(正直なところ、午後の一杯が必要な日も多いですが!☕) LinkedInでもお気軽にご連絡ください。マーケティング仲間やストアオーナーの皆さまとお話ししたり、新しいアイデアやコラボレーションの機会を見つけるのが大好きです。 一緒に、あなたのオンラインビジネスをさらに高みへと成長させましょう!
